将棋界の若き天才、藤井聡太七冠(21)が、2025年5月29日に福岡市で行われた「第82期名人戦七番勝負」第4局で、挑戦者・永瀬拓矢九段を破り、4連勝でシリーズを制して3連覇を達成した。藤井は昨年に続き、わずか4局で名人位を防衛し、その盤上の強さを改めて見せつけた。
今回の第4局は、藤井の先手番による「角換わり」戦型で進行。序盤から中盤にかけては互いに持ち時間を消費しながらの緻密な読み合いが続き、藤井は終局後のインタビューで「非常に難しい局面が多く、形勢判断が難しかった」と語った。しかし、終盤で冷静に形勢を引き寄せ、鋭い寄せで勝利を決定づけた。
シリーズ全体を通じても、永瀬の粘り強い将棋に対し、藤井は局面ごとに最善手を選び続けた印象が強い。とくに時間配分や終盤力においては群を抜いており、まだ21歳ながら名人としての風格を感じさせる内容だった。
これにより、藤井は「名人」・「竜王」など7つのタイトルを保持し続ける史上初の「七冠王」としての地位をさらに盤石なものにした。今後は「八冠」復帰や、名人通算5期による「永世名人」資格の取得も視野に入る。
■ 永瀬拓矢九段とは
永瀬拓矢(ながせ たくや)九段は1992年生まれのプロ棋士。粘り強く時間を使い切るスタイルから「軍曹」や「ストイック将棋」の異名を持つ実力派棋士で、タイトル戦にも複数回登場している。2023年には王座位を獲得し、実力ではトップクラスに位置するが、藤井聡太とのタイトル戦ではたびたび苦戦を強いられている。
■ 名人戦七番勝負とは
「名人戦七番勝負」は、将棋界における最も伝統的で権威あるタイトル戦のひとつ。1935年に制度化され、毎年春から夏にかけて行われる。前年度の名人に、A級順位戦(実力上位の棋士によるリーグ戦)の優勝者が挑む形式で、先に4勝した者が「名人」の座を得る。
対局は全国の格式ある旅館やホテルで行われ、持ち時間は各9時間(2日制)と長丁場。棋士の実力と精神力が問われる最難関の舞台とされる。名人位は、棋士にとって「名誉」「格式」「伝統」を兼ね備えた最も栄誉ある称号の一つとされている。


